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連年贈与は危ないのか?
2011年3月11日(金)11:09
今回は家族名義預金への積立で失敗する理由、連年贈与で課税されるのかなどについて解説しています。
安易な贈与で大失敗。
贈与税の基礎控除は年間110万円です。
基礎控除以下の贈与については贈与税がかからないわけですから、毎年100万円程度の贈与を10年20年と続けることを考える方もいます。
例えば、ふたりの子供に毎年100万円の贈与を20年間続ければ、4000万円もの金額が無税で贈与できるわけです。
しかし、ただ単純に子供や孫名義の預金に毎年100万円を振り込めばそれでいいのかといえば、そのような安易な考えでは後で大変なことになります。
まず、贈与とは民法549条によって、「自己の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がそれに受諾することによって成り立つ」と規定されています。
つまり、親が子供名義の預金に「勝手に」お金を入れていた場合、そもそもこれは贈与ではありません。
また、子供がそのことを知っていたとしても、それを子供が受諾していない場合や、その通帳と印鑑の管理は親が全て行っており、子供は自由にもらったお金を利用できる状況でない場合(これではあげたとは到底いえません。)には、これも贈与ではありません。
この場合には、通帳の名義は子供の名前であったとしても、それは親の財産であって、贈与は成立していないと言えます。
従って、この場合に親が亡くなれば、子供名義の通帳は「親の財産」として、相続税の課税の対象になりますし、
生前に子供に通帳と印鑑を渡したとしたら、「その時点で贈与が成立」したことになり、預金の残高に対して一気に贈与税がかかります。
そのようなことを防ぐためには、必ず、
①贈与のたびに贈与契約書を作成し、親と子供が直筆で署名押印する。万全を期するならば、公証人役場で確定日付を取る。
②通帳も印鑑も子供が管理し、貰った金額は子供が自由に利用できるようにする。
など、少なくとも民法に規定する贈与を有効に成立させ、それを客観的に証明することができる書類を作成しておく必要があります。
連年贈与の問題もあるといわれているが。
さて、ここまでの問題を慎重にクリアしてきたとしても、世間でよくいわれる「連年贈与」の問題が残ります。
連年贈与とは、贈与を毎年繰り返し行うことをいうのですが、
「毎年100万円を贈与してこれを10年間続ける場合には、1,000万円の贈与を分割払いにしたにすぎないとして、1,000万円に対して課税される可能性がある。」
世間では一般的にこのようにいわれています。
だからそれらの問題をクリアするために、「贈与する金額は毎年変える」とか「たまには贈与税を払う」とか「たまには贈与しない年も必要」だとかいわれています。
本当に連年贈与に課税されるのか?
しかし、これらの連年贈与に対して課税されるという考え方は無理があるように思います。
そもそも、連年贈与に対して課税する根拠となる条文も通達も存在していません。
(1,000万円を贈与し、毎年100万円ずつ分割で支払う旨の契約書を作っていれば当然課税されますが。)
課税されるのは、「そもそも贈与ですらなかった」からです。民法上の贈与がきちんと成立しており、なおかつ、贈与の証拠もきちんと残しているにもかかわらず、「連年贈与であること(毎年贈与していること)」のみを理由に課税された事例などというのは知りうる限りではありません。
(もしあったら教えてください。)
平成23年2月18日に判決のおりた、武富士の元専務への贈与税決定処分取消等請求事件の判決文の末尾には以下のように記載されています。
「納税は国民に義務を課するものであるところからして、この租税法律主義の下で課税要件は明確なものでなければならず、これを規定する条文は厳格な解釈が要求されるのである。明確な根拠が認められないのに、安易に拡張解釈、類推解釈、権利濫用法理の適用などの特別の法解釈や特別の事実認定を行って、租税回避の否認をして課税することは許されないというべきである。」
参考: 最高裁判例
たとえ贈与者の心の中では「1,000万円を10年間に分割して100万円ずつ支払う。」という考えであったとしても、毎年の贈与について、その都度契約書を作成するなど証拠をきちんと残している限り、課税される筋合いなどないのではないのでしょうか。
板橋区の税理士 佐藤税務会計事務所
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